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第2滑走・『美しき不審者』
「私、スケート部じゃないよ?」
舞愛は一応言ってみる。
…フィギュアスケートで急に注目を浴び始めたのは中学生の頃だ。
舞愛はもともと、事務的な短い会話に余計な感情を込める必要性を感じてなかった。
余分な愛想を振りまくこともない舞愛はその頃からよく、
「怒ってるの?」
と聞き返され、
「お高く止まってる」
「女王様気取り」
なんて陰口も叩かれていたようだった。
「ようだった」というのは、大会後すぐ、アメリカの有名コーチからのオファーがあって、渡米してそのまま卒業してしまったから。
「卒業式くらい帰ってくれば?」
と一応親には言われたし、以前からの遠征漬けの日々がたたって出席日数もだいぶ足りないみたいだったけど、知らない。
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