第2滑走・『美しき不審者』

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園芸部の二人はさらっと「そうだっけ」で流した。 「それよりさ」 逆に舞愛から会話を振られるのが珍しかったらしく、エプロンを着ける手を止めて 「なになに?」 と聞き返してくる。 「あのベンチの人さ、昨日からずっとあそこいるよね?」 「あーそうだねー」 「暇だよね~?」 キャッキャと無邪気に笑う二人。…そうじゃないだろ。 「一応先生か警察に言った方がよくない?」 「言ったみたいだよ、昨日の夕方、朱音が」 「先生がちょっと話してたよ。で、地域の方だし学校解放の行事だから特に問題ないんじゃないかって」 (いやいや、問題大ありでしょうよ!) (大人の男が昼間ずっとベンチで寝転がってるなんて異常だって!) 「地域の方って…、どう見たってホームレスっぽいじゃん、先生使えない!!」 「ホームレスだからって偏見持つのよくないよ?」 いや、悪いけど持ちますね! 「だってさ、どう見ても不審者だし、迷惑だよ。ジャケットの穴から盗撮してるかもしれないし、ストーカーかもしれないじゃん?」 「え…盗撮?ストーカー?やだ、サスペンス?」 「わぁ、桜井さんて探偵脳なんだ~。そうだ、文芸部の友達で…」 「私、ちょっと行ってくる!」 「あ、ちょっと!」 「やめときなって!」 お花畑脳の二人がさすがに制止しかけた時にはもう、舞愛は通路の反対側に渡り、寝ている男の枕元に仁王立ちしていた。
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