第2滑走・『美しき不審者』

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(いや!何引いてんの、私!) そう、ホームステイしながらアメリカ人のコーチについてたことだってあるし! (上手くコミュニケーションが取れてた…とは言いがたいけど。特にコーチとは) 日常会話程度なら、ガツンと言ってやるくらいの語学力はある!…英語圏の人なら…ね。たぶん。 「え~っとぉ……May I help you?」 (は?!何だコレっ!とっさに何言ってんの私!) 「Ye~s!I’m so hungry!」 ボロジャケットを跳ねのけて、男が飛び起きていきなり舞愛の両手をとった。 (背、高っ!!) (…って、私も女子にしては高い方だけど…にしても…) くるんくるんの肩までの巻き毛、満面の人懐っこい笑み。 思わずぐっと引き込まれそうになるほど美形なのは認めるけど。 (顔っっ!!ち~か~い~!!!) (つか、手、放して~!!) 外野(模擬店女子)悲鳴MAX。 「しっ、汁粉食べますかっ?!Shi・ru・ko!!Japanise‐An‐Soup!!」 …コレってすでに英語じゃない。 慌てて美形不審者(アングロサクソン系)の腕を振りほどく。 「あのうっ!この人、お腹減ってるみたいでっ!」 ……と、声をかける間もなく、汁粉、フランクフルト、焼きそば…と、銘々の模擬店女子から貢ぎ物ならぬ食料が差し出される。 (し…知~らないっ…と) 舞愛はにわかハーレム(食糧つき)の輪からそうっと抜け出して店の片付けに向かう。 不審者が天使の笑顔で、サンキューとかジャパニーズガール、ベリーカインド、ビューティホー、 …とかナンとか言ってるのが途切れ途切れに聞こえた。 (まさかお腹すいてあそこに二日間寝てたとか?!) (捨てられた子犬ですか…?) 「マイアーッ!サンキューソーマッチ!」 (はいはい…見た目がよくて人懐っこいって、お得よね…) 背中を向けたまま、テキトーに左手を挙げた舞愛。 実はこの後、この属性・「捨て犬」男のもう一つの顔にイヤというほど振り回されるなんて、まだ知らない。
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