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(いや!何引いてんの、私!)
そう、ホームステイしながらアメリカ人のコーチについてたことだってあるし!
(上手くコミュニケーションが取れてた…とは言いがたいけど。特にコーチとは)
日常会話程度なら、ガツンと言ってやるくらいの語学力はある!…英語圏の人なら…ね。たぶん。
「え~っとぉ……May I help you?」
(は?!何だコレっ!とっさに何言ってんの私!)
「Ye~s!I’m so hungry!」
ボロジャケットを跳ねのけて、男が飛び起きていきなり舞愛の両手をとった。
(背、高っ!!)
(…って、私も女子にしては高い方だけど…にしても…)
くるんくるんの肩までの巻き毛、満面の人懐っこい笑み。
思わずぐっと引き込まれそうになるほど美形なのは認めるけど。
(顔っっ!!ち~か~い~!!!)
(つか、手、放して~!!)
外野(模擬店女子)悲鳴MAX。
「しっ、汁粉食べますかっ?!Shi・ru・ko!!Japanise‐An‐Soup!!」
…コレってすでに英語じゃない。
慌てて美形不審者(アングロサクソン系)の腕を振りほどく。
「あのうっ!この人、お腹減ってるみたいでっ!」
……と、声をかける間もなく、汁粉、フランクフルト、焼きそば…と、銘々の模擬店女子から貢ぎ物ならぬ食料が差し出される。
(し…知~らないっ…と)
舞愛はにわかハーレム(食糧つき)の輪からそうっと抜け出して店の片付けに向かう。
不審者が天使の笑顔で、サンキューとかジャパニーズガール、ベリーカインド、ビューティホー、
…とかナンとか言ってるのが途切れ途切れに聞こえた。
(まさかお腹すいてあそこに二日間寝てたとか?!)
(捨てられた子犬ですか…?)
「マイアーッ!サンキューソーマッチ!」
(はいはい…見た目がよくて人懐っこいって、お得よね…)
背中を向けたまま、テキトーに左手を挙げた舞愛。
実はこの後、この属性・「捨て犬」男のもう一つの顔にイヤというほど振り回されるなんて、まだ知らない。
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