144人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
酔っていたとはいえ、ノーマルの松本がなんであんな気を起こしたのかは不明だが。その後は何もなかったようにそのまま眠って、朝起きると元の友達同士に戻っていた。なんとも器用なものだ。
3月に研修を終えて、4月から各部署へ配属。
俺の配属は自宅から通える範囲だったので、また実家暮らしだ。そろそろ家を出たいという気持ちもあるが家賃の事を考えるとなかなか。
マナトと二人で暮らそうって言ってのに・・・。
いつもは外回りをしているが、今日は午前中に来客があったので昼飯を会社で取ることにした。
ビルを出る。コンビニへ向かって歩く。
「佐々木くん」
後ろから声を掛けられる。同じ部署の女の子たちだ。女の子といっても俺より先輩だけど。
「あ、どうも。」
「どこ行くの?」
「ああ、昼飯買いにコンビニまで。」
「そっか、今日は出ないの?」
「いえ、昼からはでますよ。」
「ねえ、ねえ、佐々木くんって彼女とかいるの?」
「え?」
「ごめんね、いきなり。でも、みんな知りたがってるんだ。でも社内じゃなかなかそんな話ししてる暇がないでしょ。佐々木くん、外出多いし。」
「えっと。」
どう答えようか考える。いると言っておいたほうがゴタゴタしなくてすむんだろうな。でも、嘘付くのもな、見栄張ってるみたいだし。
「いませんよ。」
「えー。なんで?」
「え・・・なんでって、言われても。なんででしょうね。」
俺はははっと笑う。
「そっか、そうなんだ。どんな子がタイプなの?」
「えーっと、タイプとかはあんまり。」
マナトみたいなかわいいやつと、頭に浮かぶ。
適当に応えてさっさと買い物を済ませる。お先にと声を掛けて一人店を出る。さっき自分の頭に浮かんだ言葉に、ため息がでる。
最初のコメントを投稿しよう!