聖夜の喜劇

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彼我の距離は100m以下。私と彼を隔てているのは、何も物理的な距離だけじゃない。 私から見て左方向から吹く風速7m/sのビル風、曇った窓ガラス、彼とぴったりと体をくっつけた少女。彼の笑顔が、一番大きな障壁であり、諸悪の根源。 こちらの風が止まっても、あちらではまだ雪が舞い上がっている。 December,25th. 去年と同じようには過ごせなかった。 サンタクロースのコスチュームも、クリスマスツリーもケーキも全て、思い出でしかない。 私にとっては決して今日のことではない。 私は覚悟を決めて、ホルスターをそっと撫で上げた。
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