彼女は非凡を望んだ

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あまり非現実なことは考えない。 微非平凡なことを考える。 「もし一時間目のホームルームの時間に、誰かが私の所へ来て殴ってきたら」 今日はこれだ。 殴ってきたら、そうだな、まずなにするんですか、という。 そのあと殴り返すそれで・・・ 「美咲!」 妄想に邪魔が入った。まあ別にいいんだけど。 なに、と上の空で返す。 どうやらこのホームルームは自習になったようだ。 先生が遅刻らしい。まあ時には遅刻もいいと思う。 「ねえねえちょっと聞いてよ!」 しおりがにこにこしながら話しかけてくる。 なに、とまた上の空で返す。基本私がちゃんと目をみて返事をするなんてことはないが。 「昨日ね、ゆーくんと喋ったんだ!!」 ゆーくんとは、しおりの好きな人で、隣のクラス。宮地祐希。 三年間の片思いというとんでもない恋をしているが、相手の方もしおりのことを好きだという。 なんだそのマンガみたいなシチュエーションは。 で、何喋ったの?と一応聞いてみる。 「え?いや、喋った内容は忘れたけど、今度の日曜日一緒に映画行こって言われた!」 目をキラキラさせてしおりは喋る。こいつらもう付き合ってしまえばいいのに。 「何着て行けばいいかな?」 そんなこと、と思ったがやっぱり、なにかアドバイスが欲しいのだろうなと思い、一瞬考える。 こんなときに私が使う方法は、「私が〇○だったら」 という考え方。 今の場合、○に男が入る。 白のワンピースとか、ぼそっと呟いた。 「えぇ~・・・持ってないなあ」 そうなのだ。しおりは、ロック思考ゆえか私服も黒や赤の服が多い。しかも派手。 清楚で白でふんわり、なんて持っているはずがない。 「まあこれは私が思っただけ。いつものしおりの服を着ていけばいい」 そうじゃないと、ぶりっこって思われる、って言おうとしたけどやめた。 っていうか、もし白のワンピースを着るんだったらたぶん 一緒に服買いに行こうよ!って言われそうだったから。 金欠のこの月末に言われても困る。 そうだね、としおり。 納得したみたいでよかった。 まあこんなふうに私の一日の学校生活は終わっていく。
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