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「どうして、何も言わないの?」
「お母さん……?」
「自分がされたこと、忘れたわけじゃないでしょ?それとも私の事馬鹿にしてるの?」
「……」
「志穂に騙されて可哀想とでも思ってるわけ?」
「亜莉紗はそんなこと一言も言ってないだろ?」
「だっておかしいじゃない。私は亜莉紗をゴミを扱うようにしてきたのよ?そんな人間に心配の言葉を投げかけるなんて……」
お母さんが両手で顔を覆う。
お母さんの肩が震えている。
泣いているんだと思った。
何も言えずに俯いていると大和が話し出した。
「後悔してるんですか?」
その言葉に小さくお母さんは頷いた。
「でも、亜莉紗は怒ってるわけでも、お母さん達を蔑みに来たわけでもありませんよ。だって優しいから。そういうふうに育てたのはお二人じゃないですか」
大和の言葉に顔を上げるお母さん。
涙で濡れた目に私が映る。
「今からやり直したらいいんです。亜莉紗の夢を、叶えてあげてください」
「夢……」
「家族で笑い合いたいって亜莉紗は思っています。そこにはお父さんもお母さんも、もちろん志穂さんもいて。普通の明るい家族になりたいって、そう願っています。昔のように他の家族と何も変わらない平凡な家族になってあげてください」
大和の言葉に何かを考えたお母さんは私に手を伸ばした。
「おいで」
その言葉を聞くのは何年ぶりだろう。
我慢していた涙が溢れた。
「お母さん……!!」
お母さんに抱きつくとお母さんは最初ぎこちなく、でも優しく私の頭を撫でてくれた。
「志穂が帰ってきたら、何しようか」
「家族で遊びに行きたい…っ」
「そうだね」
「いっぱい思い出作りたい……っ!」
「うん」
「志穂も私も、二人の事困らせてみたい……っ!!」
「それは困るかな。でも、楽しそうだね。……そっか。今からでもやり直せるんだ。それを亜莉紗は許してくれるんだ」
「うん……!!」
「そっか……。ありがとう亜莉紗。楽しい思い出作ろっか」
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