あの子の影

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「おはよう、志穂」 「おはよう!!お母さん!!」 「………」 「今日の朝ごはんは志穂の好きなシュガートーストよ」 「ありがとう!!お母さん!!美味しそう!!」 「………」 いつからだろう。 こんな風に、両親が私を見ずに双子の姉を可愛がるようになったのは。 クルクルと表情が変わる愛くるしい双子の姉、香坂 志穂(こうさか しほ)。 そんな姉が大好きで、憧れで…… いつだって心臓が痛い想いをする妹の私、香坂 亜莉紗(こうさか ありさ)。 志穂の事は大好き。 両親も大好き。 だけど、誰も私を好きではない。 二卵性ゆえにあまり似ていない私達。 可愛い、成績優秀、運動神経抜群。 そんな志穂に比べて、私は可愛くない、成績はいつも下から数えた方がいい、運動が嫌いで、でもケンカなら負けないとかいう問題児。 だから両親は私を嫌った。 ご飯も作りたくなくなるくらい。 私なんて、まるでいないかのように。 テーブルの上に並べられた三人分のシュガートースト。 お父さん、お母さん、志穂がそれぞれの席に着く。 私の席なんてどこにもない。 私は胸を押さえてリビングを出た。 顔を洗って玄関へ向かう。 すると志穂が私の手をとった。 「もー!!また一人で学校行こうとする!!亜莉紗のバカ!!」 志穂が可愛い顔で頬を膨らます。 そんな志穂を見て、なんだか悲しくなった。 胸を押さえて志穂に笑いかける。 誰も私を見てくれない。 でも、もうそれは仕方ない事なのだ。 .
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