あの子の影

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学校に着いて直ぐに囲まれる志穂。 そして私に突き刺さる非難の視線。 「志穂ちゃん、志穂ちゃん」 「なんで一緒に来てるの?」 そんな、本人を前にして志穂に聞く? そして本人がいるのに、あからさまに志穂を私から引き離さないで。 私は志穂に群がる人達を睨み付けて早足で廊下を突き進んだ。 教室には行かない。 行きたくない。 だってどうせ睨まれるだけだもん。 だってどうせ傷つけられるだけだもん。 教室を素通りして資料室に逃げ込む。 この資料室は先生も生徒もあまり使わない。 それを良いことに私は鍵を盗んでここに入り浸っている。 いつものように資料室に入って鍵を閉めようとすると 「ちょっと待ってーっ!!」 一人の男の子が入ってきた。 目を見開く私。 男の子は鍵を閉めると扉を背にして座り込んだ。 ふわふわした茶色の髪。 少し色素の薄い目。 ユルいパーマ。 着崩した制服。 恐らく、彼を知らない人はこの学校にはいない。 「紺野大和(こんのやまと)……」 私の後ろの席の住人にして、学年関係なく人気が高く、甘い顔と声、抜群の運動神経、学年一位の頭脳の持ち主。 簡単に言うと、モテる人気者だ。 志穂と同じ人種。 志穂は違うクラスだけど、恐らく二人が同じクラスだったらとんでもなく人気のあるクラスになるだろう。 ようするにだ。 私の嫌いな人種。 「出てけ」 「えー?いいじゃん、亜莉紗」 「ふざけんな。てゆーか名前で呼ばないで」 「だって、香坂と亜莉紗って双子だし?どっちも香坂って呼ぶわけにはいかないじゃん」 「だったら志穂を名前で呼びなよ。あんた以外は皆そう呼んでるじゃん」 .
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