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「はあ、疲れた」 そう内田は部屋に着くなり溜息をついた。 「お疲れ様です、次もまたアメリカ?」 「うーん…どうですかね?もしかしたら、結婚するならって部長やら課長が頑張ってくれるかもですし」 そう言ってすぐに自分用の着替えを準備している。 そして時間が止まったかのように動きを止めた。 「えっと…横峯さん。もしかしてずっとここに来てない?」 「え?そりゃ…来てないですよ。さすがに」 すると最悪だと言いながら風呂場に直行する。 「ああ…本当だ。カビてる」 「ええっ?!」 私もその後ろへ着いて行くと風呂場から異様な臭いがした。 …これは、カビ? 「うう…掃除するぞ」 「は、はい!」 お風呂のお湯が3ヶ月以上も溜まっているとなると…おえええっ 「…今日はもういい」 「す、すみません。でも、私…来るつもりなんて一つも」 「折角鍵渡したのに…」 内田はへたりとソファに深く腰掛ける。 「あなたは妻なんですから、自由にここを使っていいって言ったでしょう?」 そりゃあ…ん?ツマ、妻…妻! こっぱずかしくなって「ぶっは」と噴き出す。 「ちょっと!アメリカンな内田さんですか?ヘイ、ユーメリードミー!的な」 「怒ってるんですよ」 「あ、はい。すみません」 「いっそのこと…」 内田の隣に、ソファの上で正座をした。 ジャパニーズ土下座しようかなと思ってだ。 「ん、いっそのこと?」 「ここに…住むというのはどうですか?」 「うんうん…ってええあえあ」 やっぱり…とあたふたする私をみて内田は呆れている。 つまり同棲というものですよね? 「いいんですか?えっ…」 「良いも何も、新婚早々別居?」 「いえっ、そんなことは決して…!ていうかまだ結婚してないのにと」 「そのうちしますし」 「いや、すぐにしたいですけど」 内田がフフと笑う。 眉間の皺が無くなりホッとする。
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