1

8/8
前へ
/229ページ
次へ
「私もあなたが苦手です」 目を見張った。 …それが当たり前だと思っていたが直で言われるとなると結構驚いた。 「なんでですか…私、内田さんがそういう態度を取るから…」 「自分に負がないとでも言いたいのですか?」 「負というか。もっとフレンドリーに話してくれたらというか…」 「あなたこそ私を見ると必ず避けるじゃないですか」 …あまり盛り上がらない口論だこと。 月明かりに照らされる内田の顔をこうまじまじと見ることは始めてに近い。 だいたい眼鏡のイメージしかなかったが、すらっとした背丈にスーツが似合う。 そして、意外とかっこいいのかもしれないと感じた。 「お互い様ですね」 私がポツリと零すと、内田は俯いた。 なにかを考えているようだ。 お互いがお互いを苦手だと判断した時、しかし相手をきちんと理解したい時。 考え終えた内田はこう言い放ったのだ。 「付き合ってみましょうか」
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2381人が本棚に入れています
本棚に追加