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「どうぞ」
いつになく緊張した面持ちで座る佐野さん。
片付け終えたガラス板のローテーブルに、カフェラテの入ったカップを置くと、微妙なこの緊張した空間にコトンと小さな音が響いた。
「どうも…」
なぜか正座したままの佐野さんが軽く頭を下げ、横に置いたスティックシュガーを入れてティースプーンでかき混ぜた。
佐野さんは意外と甘党。
ちなみに、かき混ぜる側の手は左。
サウスポーってやつ。
大きな体にスティックシュガーと小さいスプーンが、なんだかミスマッチだ。
私が対面にそのまま腰を下ろすと、佐野さんはカップに口を付け、
「アツッ!でも、ウマッ」
と、声を上げたのを見て思わず吹き出してしまった。
「インスタントですよ、それ」
「マジで?でも、全然旨いよこれ」
「優秀なバリスタがいるので」
「バリスタ?」
「はい。ボタンを押すだけの」
最初は何のことか分からなくて頭にクエッションマークを付けていた佐野さんも、私の言ったことに気付いたのか「あ~」と頷いた。
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