1 始まりからラブコメ?

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*** 「どうぞ」 いつになく緊張した面持ちで座る佐野さん。 片付け終えたガラス板のローテーブルに、カフェラテの入ったカップを置くと、微妙なこの緊張した空間にコトンと小さな音が響いた。 「どうも…」 なぜか正座したままの佐野さんが軽く頭を下げ、横に置いたスティックシュガーを入れてティースプーンでかき混ぜた。 佐野さんは意外と甘党。 ちなみに、かき混ぜる側の手は左。 サウスポーってやつ。 大きな体にスティックシュガーと小さいスプーンが、なんだかミスマッチだ。 私が対面にそのまま腰を下ろすと、佐野さんはカップに口を付け、 「アツッ!でも、ウマッ」 と、声を上げたのを見て思わず吹き出してしまった。 「インスタントですよ、それ」 「マジで?でも、全然旨いよこれ」 「優秀なバリスタがいるので」 「バリスタ?」 「はい。ボタンを押すだけの」 最初は何のことか分からなくて頭にクエッションマークを付けていた佐野さんも、私の言ったことに気付いたのか「あ~」と頷いた。
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