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「す…、すみません。よく…、覚えてないんです」
ボッと顔が熱くなったから、咄嗟に下を向いて誤魔化した。
佐野さんはただ「そっか…」と呟いた。
やだ、私、何てこと……。
「あの……、やっぱりその……?」
やっぱり、そこは聞いておかないと……ね。
佐野さんは私の問いに、「うん」と、罰の悪そうに苦笑しながら頷いた。
「俺もちょっと酔ってて……」
言葉を濁したけれど、事実には変わりないようだ。
その瞬間、事実を知れてよかったような、なんだかでもショックのような、落胆にも似た溜息が肩の力と一緒に抜けていった。
「あの、でも、ちゃんとシタから……」
「はい?」
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