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「茉菜……っ」
「あっ……ダ、ダメッ!」
名前を呼ばれながら躰を揺さぶられる度に、こみ上げてくるこの初めての感覚に、シーツを掴んで何度も耐えた。
けれども、佐野さんもまたその度に、更にもっと私の躰を意地悪く揺さぶる。
「ダメ?ダメじゃねーだろ?」
「ダメッ!ほんとにダメ……佐野さん……っ」
「もう“佐野さん”じゃねーよ。“勇太”だ。勇太」
「ゆう……た?」
「そう。勇太って呼べよ」
「……ゆ、勇太ぁ……っ」
「あぁ、もっと呼べよ」
心許なくもそう呼んでみると、佐野さんも息を乱しながらニヤリと満足気に笑った。
そして、シーツを掴んでいた私の手を包み込むように重ねられた、佐野さんの手。
ーーこの手が好き。
大きくて、温かくて、力強くて……
だけど、すごく優しくて……。
私に触れるこの手は今、私だけのものーー
そんな間にも、躰のずっとずっと奥の方から押し寄せて来た“何か”が私に迫って来る。
「勇太ぁ……勇太ぁっ!」
ーーその瞬間、怖いくらいのスピードで一気に浮上し出す躰。
初めてのこの感覚が怖くて……
本当にどこかに吹き飛ばされてしまわないように、ギュッと佐野さんの背中にしがみ付いた。
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