11 最悪なタイミング?

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幸い、背の部分の高いボックス席になっていて、後ろの様子は分かりにくくなっている。 まぁ、禁煙席ってのがちょっと辛かったが、騒がしい店内とは言えじっと耳を凝らせば、すぐ後ろの会話は結構筒抜けだった。 『赤ちゃんは何カ月になるの?』 と、佐倉茉菜が言ったことで、何ともヘビーな展開になっていることをそこで初めて知った。 で、聞いている内にだんだん腹が立ってきた。 ふざけんなよ!! 頭に血が上って、周りのことなんか全然どうでも良かった。 ただ、こいつを悲しませる奴が許せなかった。 ーーこいつを誰にも渡したくなかった。 煙草を吸い終えてから、部屋のライトを点けた。 「んっ……」 パチンッと言うスイッチの音と、急に明るくなって眩しかったのか、寝返りを打った佐倉茉菜が顔をしかめながら目をこすり出した。 「起きたか?」 ベッドの端に座ってその顔を覗き込むと、パチっとその大きな目が一気に開いた。 「お、おはようございます?え……佐野さん?」 「まだおはようじゃねーよ」 俺の顔を見るなり、動揺したように目を泳がせる。 起き抜けのその顔がちょっと間抜けで、でもなんか可愛くてフッと笑うと、まだぼうっとしながらも佐倉茉菜の瞳の中にはちゃんと俺が映っていた。
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