1 始まりからラブコメ?

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「そんなに萌絵が好きで……、そんなに萌絵に会いたいなら……、私と別れて堂々と会いなよ。 そしたら、影でこそこそする必要もないでしょ?」 昨日私は、彼にそう言った。 彼の家の近くの喫茶店で、大好きだった彼に自分から別れを告げた。 「ごめん……、サクラ」 彼は、本当に申し訳なさそうに、震える声で項垂れた。 彼の名前は、対馬 真治( ツシマ シンジ) 大学時代の同じ学部の同級生だった。 出会ってから6年、付き合ってからは2年半。 あんなに大好きだったはずなのに、悲しいはずなのに、不思議と涙は出なかった。 そう、私はそう言う可愛気のない女だ。 ここで泣いたからと言って、どうにかなるとも思えないし……。 ましてや、自分から別れ話をしておいて泣くなんてどうかと思う。 それに、何となくこうなることは、心のどこかで分かっていたのかもしれない。 でも、一つだけ心残りと言えば…… とうとう最後まで真治は、私のことを下の名前では呼んでくれなかった……。
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