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「とにかく、美代子さんの怒りボルテージがこれ以上溜まらないうちに行った方がいいと思うな。君が起きるまでにもう十分は経ってるよ?」
「げ――」
思わず、口の端がひきつる。
それはマズイ。
あの女は、兎に角待たされることを嫌う。
人のことを待たせるのは得意技のくせして、だ。
そう、あいつのことを一言で表すのなら女王様という言葉がふさわしい。
なんせ、私が世界の中心だとか本気で思っているような節がある。
そんなことをいうと、あなたの母親でしょうに――などと、あきれたように雪花には返されるのだろうが、俺自身はあいつのことを母親だと認識したことはない。
精々が、年の離れた姉程度。実際、血は繋がっていないのだから割と正しい認識ではないかと思う。
傲慢なところをどうにかすれば、結構スゴい奴だと認められるのだが。
これは、兄貴と俺との共通認識だ。
ともかく、鏡の国のアリスのウサギのように、俺は這々の体で教室から駆けだした。
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