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「よーし、あとはケーキを売り切れば終了だよね、頑張っていこう」
「え? 辻本さんはビラ配りだけですよね、終わったんだから帰っても」
いいですと言い切る前に。
「いやー、帰っても私、一人だし、最後まで付き合うよ」と、若干、寂しそうな笑みをこぼす、辻本さんに帰れなんて言えるわけもなく。
「じゃあ、よろしく、お願いします」
半ば、図々しくもお願いした、一人でやり切れるか、不安だからと言い訳をして。
それから、一時間、お互いに言葉を交わすことなく、ケーキを売っていく。
「サンタクロースってさ、いつまで信じてた?」
辻本さんが、不意につぶやく。
「小学生、低学年くらいまででもう、信じてないですね」
僕は答える、無視したら気まずい。
「笑うかもしれないけれど、私は今でも信じてるんだ」
笑っていいよとコリコリと、こめかみを掻く、辻本さんを笑えるわけもなく、沈黙を貫くしかなった。
「正直ね、毎日が嫌になるんだ、ニュースも不吉なことばかり、放送するしさ」
唐突に、独り言を語り初めても、止められなかった。
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