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「だが、貴様にそれを聞く権利があるのか?菖蒲とやらの貞操を心配する権利は……果たして貴様にあるのかな?」
「早く答えろ、クソ野郎……!……アイツに、菖蒲に何をしたァアア!!!」
激昂し、完全に怒りに囚われた良太郎は気が付かなかった。
冷静さを欠かなければ気が付いたであろう絶望鋼鬼の視線に、位置取りをするような奇妙な動きに……!
「貴様からは『別な女』の濃い匂いがする」
「ッ!?」
その言葉に良太郎は身を固めた。
菖蒲という思い人がありながら、彼女の親友であるサクヤを欲望のままに貪った……その上、彼女を安心させる為とはいえ『愛している』と嘘を吐いた……彼の中にあったそんな後ろめたさが、その身を凍らせたのだ。
絶望鋼鬼は、その事を知っていたのか?
否、勿論知らない……知る由も無い。
彼は只、良太郎から漂う女の匂いを感じ取り、挑発の材料に使ったに過ぎなかった。
故に僥倖!これは絶望鋼鬼にとって僥倖である!
「貰ったァアアアアア!!!」
咆哮!そして轟音!
絶望鋼鬼の叫びが、良太郎の背後にある瓦礫の山に埋もれるそれを呼び覚ました!
「なっ!?」
咄嗟に振り返った良太郎は目にする!
瓦礫の山を吹き飛ばし、中から現れたそれの正体を!
「腕だと!?」
そう!それは竜王との戦いで飛んで行った絶望鋼鬼の左腕!
恐るべし!絶望飛翔拳は遠隔操作が可能だったのだ!!!
超高速で飛来する巨拳を避ける為、良太郎は空高く跳躍!
しかし、巨拳は向きを変えて尚も追ってくる!
「チッ……面倒な腕だ!」
それを一瞥して毒づく良太郎は遥か下方、絶望鋼鬼の姿を捉えた。
彼は、恐るべき巨体を捻り上げて攻撃の体勢を取っている。
絶望竜巻拳の構えだ!!!
「!?」
その構えに、良太郎の本能は盛大な警鐘を鳴らした!
どんな攻撃が来るか分からぬ良太郎だが、その威力は本能が理解している!
しかし、ここは空中!
その上、下からは巨拳が唸りを上げて迫ってくる!
逃げ場は、無い!
「ウガァアアアアアアアア!!!」
「絶望竜巻拳ォオオオオオ!!!」
ほぼ同時に上げられた咆哮と共に、良太郎目掛けて災害級大竜巻が吹き荒れた!!!
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