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速い!今までで最も速い踏み込み!
絶望鋼鬼は緩慢に動く鮮血悪鬼の懐に飛び込み、全身全霊を掛けた竜巻正拳を放つ!!!
ブチンッ……!
「あ……?」
何かが、切れた。
絶望鋼鬼は、何が起こったか理解できていなかったのだ。
故に、端的に言おう。
絶望鋼鬼の、竜巻正拳は放たれなかった……放てなかったのだ。
彼の腕は、それより速く目の前の悪鬼に引き千切られていた。
絶望鋼鬼の目に、悪鬼の笑みが焼き付く。
邪悪に笑う、捕食者の笑みが……。
「ガァアアアアアアアアアア!!?」
遅れて、断面から鮮血が迸る。
絶対的な硬度を誇る絶望鋼鬼の鬼鎧装甲など、悪鬼の前では紙に等しかった……。
「楽に死ねると思うなよ……絶望鋼鬼……絶望させてやる、嫌というほどな」
悪魔の微笑みを浮かべた悪鬼は、そっと彼に抱き着く。
メキッ……メキバキバキメキャ!
ゆっくりと、絡めた腕を締め上げていく。
痛々しい破壊音と共に、絶望鋼鬼の鬼鎧装甲は完全に砕かれ、彼の身体は真っ二つに折れた……。
同時に、彼を支えていた最後の柱も、ボキリと音を立てて折れてしまった……。
……ドシャリッ。
分離した絶望鋼鬼の上半身が、荒れ果てた地面に音を立てて落ちる。
それを追うように、鮮血悪鬼の腕から下半身も地面に滑り落ちた。
「……ぐ、あ……ワ、シは……負け……」
落ちた上半身から言葉が放たれる。
それを冷たく見据える鮮血悪鬼が、静かに問いを放った。
「……意識がある内に聴いておく……操血静鬼は何処にいる?」
その問いに、絶望鋼鬼は虚ろな表情で言葉を返す。
「……あ、あ……負け、負けた……」
「おい……質問に答えろ絶望鋼鬼……」
「負け……た、負けた……」
彼の精神は、既に崩壊していた……いくら問おうとも、譫言のように『負けた』と繰り返すだけだった。
鮮血悪鬼は、これ以上の問答は無理と理解して舌打ちをする。
「クソ野郎が……もう壊れやがった……折角、操血静鬼の手掛かりが聞き出せると……思った、のに……!?」
ドッ……クンッ!
途端、鮮血悪鬼の心臓に強烈な痛みが走った。
「グッ……!?……クソッ……!……畜生ッ、また!?」
そして襲ってきた強烈な渇き……血が、不足しているのだ。
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