血嵐跋扈

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「……あ?……ハハハッ、悪い悪い忘れてた……お前が目の前にいるのをよ!」 そんな良太郎は、漸く思い出した。 目の前に転がる、分離した哀れな敗者の存在に。 「血、血だ!アハハハハッ!今夜はご馳走だっ!アハハハハハハハハハッ!!!」 目を見開き、その奥に狂気の光を宿した良太郎は飛び付いた。 飢えた獣の様に、俊敏、獰猛に、死にかけた絶望鋼鬼の身体に噛み付いた。 そして、溢れ出る血を吸いながらその肉を噛み千切る。 「ハハハハハハッ!美味い!美味いぞ!見た目は悪いが最高に染みるぜぇええ!!!ハハハハハハッ!!!」 噛み千切った肉塊を、まるでガムでも噛むように音を立てて咀嚼し、良太郎は嬉しそうに叫んだ。 その目から、ボロボロと大粒の雫を溢しながら……。 「あぁ……染みる……染みていく……血液が……命が……」 小さく言葉を溢し、味のしなくなったそれを口から吐き出して、良太郎は再び肉塊に歯を突き立てた。 「あぁ、クソッ……美味い……無茶苦茶美味いぜ畜生が……ッ!」 ピチャピチャと音を立てて、涙を溢す良太郎は血を啜る。 彼は、確かにその身を化物に変えてしまった……しかし、その心は未だ人間のままだった……。 人間で、あろうとしているのだ……! だが、現実は残酷である……彼の身体は、意思とは裏腹に血を啜り続けた……欲望のままに、その飢えを満たすために……。 「………………ふはぁー」 良太郎は、既にピクリとも動かなくなり、物言わなくなった絶望鋼鬼の身体から口を放した。 思う存分壊し、血を啜った充足感からか、彼の口からは息が漏れる。 恍惚とした表情で虚空を見つめ、余韻に浸っていた良太郎の耳が音を捉えた。 ビキッ、ビキビキッ……! 渇いてひび割れる様な音に意識を戻され、咄嗟にそちらへ顔を向ける。 良太郎の目に映ったのは、たった今食い散らかした肉塊の頭部……そこに輝く絶望鋼鬼の核結晶だ。 「……絶望鋼鬼の、核結晶か……随分と綺麗な金色だな……」 すっかり夢見心地の良太郎は、興味なさげにそう呟いた。
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