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一
ぞくりとした。
長くて黒い艶やかな髪――
どこまでも白く滑らかな肌――
良くできた人形のように無表情で端正な顔だち――
そのうち大きな瞳だけが、何かを訴えかけるように僕へと真っ直ぐ向けられていた。
教室に入ってきてから、ずっと。
一瞬すらも逃さず――
ずっと、僕を見つめていた。
僕も、見つめ返していた。
僕らの間にあるはずの教壇も机も、クラスメイトの後ろ頭すらも視界から消え去り、ただ長い長い、永遠ともいえる時間、僕は彼女と見つめ合っていた。
教壇に立っている、彼女の名は神野依代(じんのいよ)。
たった今、僕のクラスに転入してきたばかりの女の子だ。
一目見て、心臓の高鳴りを覚えた。
二秒見て、息が詰まる思いがした。
三秒見て、現実感が喪失した。
――彼女は天使かもしれない、と僕は信じかけてしまった。
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