第一章 天国の時代

4/38
前へ
/347ページ
次へ
 一見するとショートカットのよく似合う、小柄で可憐な印象――  だが、その性格を一言で表すなら直情型。  街を歩いているヤクザに平気で喧嘩を売るタイプ。  そして喧嘩に勝ってしまうタイプ。 「ちょっと、聞いてんの? ひょっとして、自分のこと可愛いと思って調子に乗ってる?」  あかねは凄むように身を乗り出したが、神野依代はその声すら耳に入っていないようだった。  ちらりとあかねを一瞥してから、またすぐに僕の方へと顔を向けてくる。 「……むかつく」  僕の聴覚は、ただでさえ短いあかねの何かがぶちりと切れる音を聞いた。 「その根性、叩き直しちゃる!」 「やばい! あかねが切れたぞ!」 「押えろ! 押えろ!」  クラス中の男子が、一丸となってあかねの周りにまとわりつく。 「はなせ! あのアマ、一発どついちゃらんと気が済まん!」
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加