第一章 天国の時代

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 ――全く、先生に迷惑をかけているのはどっちだというのだろう。  あかねと、そして神野依代と。  僕は教室中の騒動を無視して、教壇上にいる転校生に視線を戻した。  まだ彼女は僕を見つめていた。  不思議そうに、少しだけ嬉しそうに。  そこに花が咲いたかのような笑顔で―― 「タカナオ」  その名を、呟く。  そして僕らは、見つめ合う。  僕と彼女は、見つめ合う。  つまり、僕と。  そして、神野依代と。  彼女の笑顔は僕しか知らない。  少なくとも、この教室の中では――
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