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「はぁ。はぁ。最悪だぁ~!」
闇夜の街中を一人の少年が疾走していた。
「ここまで来れば、大丈夫かな?」
少年は、ビルの壁に手をかけながら、右手で額の汗を拭った。
「何が大丈夫ですの?」
少年の後ろから声をかける少女がいた。
「あぁ。何で白井がここにいるんだ?」
少年が白井と声をかけた少女は顔を引き吊りながら答える。
「あからさまに嫌な顔をしないで下さい。」
「いや。あそこまで必用に追い回されたら誰でもなるって。」
少年はため息を吐きながら白井に顔を見せた。
「あら?私だって嫌でしているわけではありませんわ。」
白井は少年の横に来て壁に寄りかかった。
「貴方の事が好きだから…」
白井は聴こえないように話す。
「ん?なんか言ったか?」
少年は白井に聞き返す。
「いえ。何でもありませんわ。」
白井は顔を背け答えた。
少年は訳も解らず頭を捻る。
「それはそうと、いつまでこんな汚ならしい場所にいるつもりですの?」
「ん?あぁ。戻るか…」
少年は白井を抱き抱えて空を翔んだ。
「ちょ、ちょっと何をしますの!」
白井は顔を染めながら慌てた。
「何って、可愛い女の子をそのままにして帰るほど落ちちゃいないよ。寮の近くまで送ってやる。」
少年は白井に顔を見せないようにしながら翔んだ。
「有り難う御座います。」
白井は顔を伏せて呟く。
そして少年は白井を見ながら微笑んだ。
「良いって。」
少年は何でこんな娘を好きになったのかな?と思った。
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