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あの可憐さでアプローチされたら、大概の男の子は桜子に落ちると思う。
コウタくんは、なんであたしと付き合おうと思ったんだろう?
顔もスタイルも、悔しいことに性格ですら桜子より勝っているとこなんて、一つもないのに。
タメ息を漏らして、鈴なりになったギャラリーの影から少し離れる。
歩き出そうとした時、ふと視線を感じて、あたしは恐る恐るグラウンドに顔を向けた。
「…………………」
ウォーミングアップを終えて、汗を拭うコウタくんが、驚いたようにあたしを見ていた。
あたしたちの間に張りつめた空気が流れる。
コウタくんは、 瞬時に強ばったあたしの顔から、瞳を逸らしかけて、
思い直したように真っ直ぐあたしを見た。
どうしよう。逃げたい。
でもダメだ。
もう、逃げないって決めたんだから。
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