清く正しい彼女と悪役のあたし

4/10

1462人が本棚に入れています
本棚に追加
/461ページ
なんて、下らない妄想を繰り広げながら百面相していると、桜子はあたしを不審げに見ながら口を開いた。 「はじめまして。わたし早瀬桜子と申します」 丁寧に頭を下げて挨拶する。 少し声が甲高く感じるのは、彼女が緊張してるからだろうか。 「矢木、コハルさんですよね?」 「……」 確認じゃなくて確信に満ちた問いかけ。 どこでどう調べたのかわからないけど、やっぱり彼女はあたしを知っているらしい。 「あの、わたしコウちゃん………小野コウタくんの幼なじみなんです。 少しお話したいことがあってお待ちしてました。 今お時間よろしいですか?」 言いながら、じっとあたしを見つめてくる。 黒目がちで、潤んだ目はエサをねだる子犬みたいな強制力がある。 大抵の男の子なら、この時点で一も二もなくうなずくんだろうけど。 「………イヤです」 あいにくあたしは男の子ではない。
/461ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1462人が本棚に入れています
本棚に追加