矢木さんは今いないそうです

3/10

1462人が本棚に入れています
本棚に追加
/461ページ
「ちょっとしっかりしてよコハル。 こんな姿小野先輩に見られたら最悪だよ」 と、真知ちゃんが制服のリボンを結び直してくれる。 ついでに真知ちゃんはあたしを椅子に座らせて、乱れた髪をとかし、ぼっさり眉を整え、本格的に化粧までし始めた。 楽しそうな真知ちゃんにされるがままになりながら、ぼんやりと机に視線を落とす。 あたしがコウタくんとどう付き合おうと、桜子には関係ない。 それは今でもそう思う。 正々堂々と向き合うのが桜子の美学なら、桜子が一人でやってればいいんだ。 別にそれを強要される謂(い)われなんてない。 大体、向き合うってどうすればいいの? …………だって。現実のコウタくんは空想や夢の中の彼とは違う。
/461ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1462人が本棚に入れています
本棚に追加