矢木さんは今いないそうです

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「ひ、ひどい真知ちゃん」 顔を伏せてしくしく泣いていると、さすがに罪悪感を覚えたのか、真知ちゃんが苦笑いしながら、自分のポーチを漁った。 「ごめんごめん。 コハルがボケーっとしてるから遊びたくなっちゃってさ。 今すぐ落とすから、許してよ」 メイク落としのシートを取り出して、あたしの顎に手をかける。 「……ぷっ………」 苦しげに笑いをこらえながら、真知ちゃんがあたしの顔を拭こうとしたところで、廊下の方から黄色い声が響いた。 「キャー」 「なんで、2年の廊下にいるの!?」 「やだ!先輩、マジでカッコいいっ」 キャイキャイ騒がしい廊下に、何となく目をやる。 「ひぃ!」 と同時にあたしは小さく悲鳴を上げて立ち上がった。 半分開いた窓からコウタくんが歩いて来るのが見えたのだ。
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