矢木さんは今いないそうです

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「………さっき、妙なメイクで勢いよく掃除道具入れに駆け込んで行ったのは、矢木に見えたけど違うのか?」 ば、バレてる。 モロバレしてる。 さすが、視力2.0! 食い下がるコウタくんに、男子学生その1は困ったように頭をかきながら、こちらに戻ってきた。 「あの。掃除道具入れにいるのは、矢木さんじゃないかと言ってますけど」 なぜかクラスメイトの真知ちゃんに敬語を使いながら、うかがうように見上げてくる男子学生その1に、真知ちゃんは優しく言い聞かせるように告げた。 「ここにいるのはコハルじゃないわ。 掃除道具入れに住まう妖怪よ」 戸惑い顔の男子学生その1は、ドアの隙間から覗くあたしを見て、なるほどと納得しながら、再びコウタくんの元へと向かった。 なんで「なるほど」なんだ。 あいつ、後でシめる。 「掃除道具入れにいるのは、矢木さんじゃなくてただの妖怪です」 張り切って告げた彼にコウタくんは、微妙な顔をした。 まあ、普通そうだろうと思う。
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