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不機嫌そうなコウタくんがちらりとこっちに視線を向ける。
掃除道具入れのドアの隙間から覗いていたあたしは、緊張に身を強張らせて強くモップを握った。
「じゃあ、矢木が出てきたら、話しあるって伝えといて」
それだけ言って、コウタくんはすぐに教室から去っていった。
つ、疲れた。
身体より精神的に疲れた。
あたしは掃除道具入れから抜け出して、ヨロヨロと自分の椅子に座った。
ざわりと教室が揺れる。
「なんだあれ!妖怪か?」
「妖怪よ!妖怪が出たわ!」
さっきの真知ちゃんメイクに加えて、掃除道具入れでモップと同化を試みた結果、またもボサボサ髪のヨレヨレの制服姿になったあたしは確かに妖怪じみているかもしれない。
自覚はあるけど、今はそれどころじゃない。
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