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階段に差し掛かって足を止める。
コウタくんの教室から聞こえるざわめきに、あたしは振り返って息を呑んだ。
勢いよく、ガラリと開く横開きのドア。
「小野、どうした?」
教師の問い掛けに答えず、ぴしゃりとドアを閉めてコウタくんはあたしを正面から見据えた。
切れ長の目を細め、息をつく。
あたしは、金縛りにあったように動けず、呆然と彼を見つめた。
コウタくんが歩いてくる。
窓から夕日が差していて、光りに照らされた彼はなんだか夢のなかの住人みたいだった。
「矢木」
どうしよう?
どうしたらいい?
オロオロと思考がさ迷う。
話さなきゃ………ちゃんと話さなきゃ。
それは分かってる。
分かってるけど!
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