存在証明

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 須藤はノートを配り始める。クラス内はがやがやと騒ぎ立てていた。 「ちょっと手を貸してくれ」  須藤は教卓に積んでいたノートに目を配って言った。悟志は十冊程ノートを取り、一人一人に配る。その時であった。 「あれ?今日は休みか加藤」  悟志は鞄の掛けられていない机を見て首を傾げた。加藤は学校を欠席するのはたいへん珍しく、今まで皆勤賞だった。その加藤が今日学校に来ていない、それは悟志にとってちょっとした事件でもあった。  悟志は加藤程ではないにしろ学校を休まない生徒だった。加藤には妙なライバル心が沸いているらしく、高一年生から今まで、葬儀以外の欠席はない。葬儀では休みにカウントされないため、悟志は三か年の皆出席を狙っている。対する加藤は中学一年生から今までなので休みはない、そんな加藤が学校を休んだ。 「ふっ、加藤。残念だったが、この勝負、俺の勝ちだ」  勝負は勝ってに悟志が思い込んでいるだけである。悟志は微笑を浮かべ、加藤の席にノートを置いた。 「なにしてんだ悟志?」と加藤の後ろの席の飯塚か訝しげな表情で悟志を見据えていた。「加藤って誰だ?そこは鈴木の席だぞ?」 「何を言っている?ここは加藤の席だろう、すぐ後ろだろうが?それに、鈴木って誰だよ?」  ヘラヘラと笑う悟志をクラスメイト全員が頓狂な表情を見せる。 「ははは、冗談だよなお前前?」と飯塚は引き攣った顔で悟志を指指す「鈴木はお前の親友じゃないのかよ?」  鈴木という人物に全く心当たりが無かった。それどころか、クラスメイト全員が、あの存在感なある加藤を、誰もが覚えていなかった。
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