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授業時、出席を取っていた先生は結局加藤の名を呼ぶ事は無く、代わりに鈴木という男が呼ばれた。鈴木の返事が無いとき先生は「今日は鈴木は休みか、珍しいこともある事だ」
先生、加藤は知りませんか?と、悟志は訊きそうになったが、直ぐに堪えた。それはほんの少し前、クラスメイトに散々訊いたが、皆同じく「知らない」と首を横に振るだけであった。
悟志はさっきまでの事を振り返っていた。先生が何か説明しているようだが、全く耳に届かない。
確かに、自分は加藤のノートを返却したはずであった。それは間違えない、ライバルと思っている加藤がよく使っているノートだった。加藤は青い大学ノートを愛用していた。ノートな端からは色とりどりの付箋がはみ出ている。
「間違ってないはずだ」と悟志はぶつぶつと呟き考える。
「悟志」と前の席の大神が机をトントンと叩いた。
「どうした大神?」
「指名されてるぞ」と大神が先生の方を見た。
先生は教科書を開いて悟志をじっと睨んでいた。「有川、もう一度聞く。問い四の答えは?」
「ええと……」と悟志は急いで教科書を開き問い四を見る。二次関数だった、複雑に見え、難解に見えてくる。本当はなんとも無い数式だが、突然思考を変えた悟志には全く解けなかった。
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