それは無駄な心配と言うものです。

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「次元間の圧力差を使った、エネルギー抽出と次元転移実験ですか。拠点到着までには、読み込みを終わらせておきます。」 既に乗りなれてしまった、何時もの改造ワゴン車の中。後ろの販売スペースから、気だるい感じのウィキの声がした。表情こそ何時ものポーカーフェイスだが、顔は火照り赤みが増し薄く汗をかいている。 ウィキは、結社のアーカイブ全てを記録した歩く資料庫戦闘員。だがその記録には段階的な、プロテクトが仕掛けられているのだと言う。何せ召喚した人間が、結社を裏切らないとも限らないのだ。始めから全ての手の内を明かすのは、危険過ぎると考えたらしい。 そこまで考えられるのなら、何故にもっとまともな作戦を練らないのかとぼやきつつ、今のウィキは急激に開放され数を増した記録をもて余している様だ。要するに知恵熱である。 パソコンみたく、処理落ちでもしたのかと聞いたら、無表情に睨まれたとだけ言って置く。今は販売スペースにクッションを敷いて、頭に氷嚢を乗せたまま無表情な赤い顔をしつつ横になっている。 …笑うべきかどうか散々悩んで、今は持ってきた資料に集中しているところだ。
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