石橋を叩いて渡れ .

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  「お前なんで妙見山なんか登ったの?」 じゃれついてたどり着いた玄関で上履きを履きながら、足元を払う石橋に今度は俺が尋ねる。 「秩父鉄道を見に行ったんだ」 「あぁ、機関車走ってるもんなあそこ」 「いや、貨物が目的だ」 一瞬意味が汲み取れず、我ながらキョトンとしてしまった。 「か…貨物ぅ?」 「そう貨物。俺は貨物車両が好きなんだ」 「貨物車両って?」 「荷物を運ぶ機関車だよ」 多分。 分かりやすく話してるつもりなんだろうが、全く通じない。 更に首を傾げる俺のおでこを、軽く押して困ったように笑う。 「目が落ちるぞ」 「は?」 「ドングリ眼が落ちそうだ」 思うより先に手が出る。 「痛っ!」 気がついたら鞄で思い切りぶん殴ってた。 「バカにすんなっ」 「してないだろ」 「してるわっ!死ねカス」 「ウグイス、朝から口が悪すぎるぞ」 俺だってなお前みたいに切れ長の目に生まれたかったわ。 黒目が真っ黒で大きくてまん丸な目なんて、童顔に見られるだけでなんの得にもならない。 「次は殺す」 睨み付けると石橋はニヤリと笑って、耳元で低く囁いた。 「可愛いらしい顔して、物騒な事を言うんじゃないよ」 あっっったま来た!!! 鞄を振り上げると、石橋も鞄で応戦して来る。 「負ける気はないぞ」 「叩きのめしてやる」 ややもすると、クラスメイトを巻き込んでの肉弾戦になっていた。 女子には完全に引かれてたけど。 先生の怒鳴り声で止まるまで、なんだかやたらと楽しくかった。  § § § § § § .
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