石橋を叩いて渡れ .

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「今日はありがとうございました」 しっかり礼をして、柔道部の稽古場を後にする。 「じゃあ俺と石橋は部室戻って写真のチェックで……静香ちゃんとうぐいす、2人はどうする?」 視線を寄越さず。 蛍光緑の眼鏡を外して汗を拭くのは2年の山崎竜太郎先輩。 見た目は至って普通なのに、眼鏡が派手で色者扱いされているが。 話術がめちゃくちゃ上手くて頼れる先輩だ。 「私は一緒に戻って、さっさとこれ起こしちゃいます」 レコーダーを片手に微笑むのは同じく2年の岸田静香さん。 如何にも真面目な銀縁眼鏡、綺麗まとめた黒髪。 制服を着崩さない凛とした佇まい。 完璧過ぎて逆にキャラ立ってしまっていた彼女は山崎先輩の相棒だ。 「俺は少しパソ室寄ってから行きます。さっき斎藤って人が、お兄さんも柔道やってたってのが気になって…」 外した眼鏡をかけながら山崎先輩はじーっと俺を見る。 「パソコン室は涼しいだろうなぁ」 「ふふふ、帰りに冷たいの買って行きますよ」 「OK、じゃあ後で」 季節はもう夏を迎えていた。 制服も夏服に代わり、真新しいピカピカのYシャツが太陽をこれでもかと反射する。 「あっっちぃ~~」 俺は仮入部も1ヶ月を越えて、いつの間にか通常戦力として扱われていた。 新聞部の仕事は想像よりも本格的で。 読者の一部には神社の氏子さんも含まれていて、下手なタウン誌よりクオリティが高いと思う。 でも。 部長直々に集めた部員は精鋭揃いで、なんなく仕事をこなす。 石橋も山崎先輩が驚くほどのカメラの腕を引っ下げて、その一人に名を連ねた。 これといって取り柄のないのは俺だけ。 「あれ、しんぱち。お疲れさま」 「おぅ、うぐいす!お疲れちゃ~ん」 職員室経由でパソ室へ入ると、八森がなにやら調べものをしていた。 「どうしたの?柔道部終わった?」 こいつも中学から育んだ人脈を武器に、情報収集能力が半端ない。 ちょっと気持ちが悪いくらい、この学校の人間関係を熟知している。 「うん、柔道部の斎藤さんって居るじゃん。目が細い人」 「あぁ、2年の人ね」 「あの人のお兄さんについて調べようと思って」 隣に座ってPCを立ち上げる。 .
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