11人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「……ウグイス」
消え入りそうな石橋の声で我に返る。
「うわっ!」
何やってんだ俺!!!
なんで石橋の腕に頬をくっつけてたんだ?!
「ご、ごめん!流石に今のはない」
見上げると病気かと思うほど、赤黒い顔。
茶色の目が揺れて…
ドサッ
石橋の鞄が足元に落ちた音。
腕なんか比じゃないくらいの熱さが俺を包む。
石橋が俺を抱き寄せてる?
「……バ…ッシー」
同い年とは思えないような胸板。
むせかえるような男の匂い。
耳元に感じる息づかい。
めまいがする。
「石…橋」
なんかヤダ。
体中持ってかれる。
「ヤダ!!」
拒絶の声に一瞬、腕の力が緩む。
俺は力ずくで腕を振りほどいて、鞄で石橋を叩いた。
「石橋のバカっ!!」
石橋の答えを待つ事なく全力で走る。
体中心臓になったようで、俺は走りながら耳を塞いだ。
何だよ今の!?
力の入らない足をなんとか動かしてたどり着いた通学路。
「…何やってんだ、俺……」
ゆっくりと息を整え、滝のように流れる汗を肩で拭う。
駅に足を向けると。
通いなれた道がいつもより下り坂に見えた。
.
最初のコメントを投稿しよう!