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「ウグイス」
「ん~」
「実は前から気になっている事があってな、尋ねて良いかな?」
石橋のしゃべり方にはちょっと特徴がある。
あぁ…鉄男って感じ。
良く知らねーけど。
「何?」
「お前、登山とかやるのか?」
「ぅえ?!」
思わず立ち止まってしまう。
な、なんで?
俺もお前みたいに周りからどっか浮いてる?
「そんなに驚かれても…」
「…えと……」
ごまかせ。ごまかすんだ俺。
花の高校生活は始まったばかりだ。
「以前、妙見山に登ったんだが」
「え?!マジ!俺まだ登った事ない」
って俺ぇ~~!?
口車に乗ってんじゃねーよ。
「あ…いや、」
「そこで会った登山家に山の歩き方を教わったんだが、お前がその歩き方で歩いてるから気になってな」
石橋は俺の体を上から下へ撫でるように眺める。
「この坂にビクともしてないし」
だってコレぐらいで息が上がってたら、山男の名折れだ。
中途半端な俺のプライドの馬鹿。
俺の目をじっと見つめる石橋。
なんつーか、嘘がつきづらい視線。
「…ちょ…ちょっと山が好きなだけだよ」
「そうか」
石橋は何度か頷き視線を坂の上に戻す。
話は終わったようだ。
でも俺の中じゃまだ終わってない。
「あのさ石橋」
「何だ?」
「他のヤツに言うなよ」
驚いた表情で俺を見る。
「別に。わざわざ誰にも言わないが、なぜ隠す?」
「いろいろあんだよっ」
首を傾げながらも「分かった」と石橋は目を伏せる。
心からホッとした俺は思わず大きく息を吐いた。
俺はお前みたいにお暗い趣味を晒せるタイプじゃないからさ。
「サンキュ」
「礼を言われる覚えがない」
「うるせーよ、有り難く受け取れ」
軽く足元を蹴ると怪訝な顔で俺を見た。
「ウグイス、お前は足癖が悪過ぎるぞ」
石橋はケラケラ笑いながら尚も足を蹴る俺を、ブツブツ言いながらも受け入れる。
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