石橋を叩いて渡れ .

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  「随分、灼けたなぁ」 ゴールデンウィークが明けて。 久しぶりでちょっと照れくさい気分になった俺の、石橋への第一声。 「ウグイスは余り灼けてませんね…」 「長袖・長ズボン・帽子で登るから、そこまで灼けねーっつーの」 不躾にジロジロと見る眉間に軽く突っ込んで、定期を鞄に突っ込んだ。 『お土産があるから、改札で待ってます』 昨日、布団に入ってから気づいたメール。 俺はお土産なんか全く思いつかなくて、一度は断りのメールを入れた。 『貰って下さい。大したモノじゃないから』 返信はそこで途切れ、お土産を貰うしかなくなった。 「なにこれ?」 「ぬれ煎餅」 「ぬれせんべい?」 お土産は本当に大した事なくて、俺はちょっと安心する。 「いただきまぁーす」遠慮なく封を開けた。 「あ、こら。行儀悪いよ」 「一枚くらい大丈夫だろ、登山の前に栄養補給」 ケラケラ笑って開けたは良いが、せんべいが袋にくっ付いて上手く取れない。 「何してんのさ?」 「ベタベタで取れねぇんだよ」 我ながら不器用だなと、顔が熱くなる。 「…ほら貸して」 大きくて太い指で易々と取り出した石橋。 「どうぞ」 「サンキュ」 そんな見んなよ。 お前の土産食うんだから、見られてなんぼだけどさ。 「お、美味い」 「うん」 目がふにゃって細くなる笑顔。 石橋って男前くせに嬉しそうに笑うと、ちょっと気持ち悪いんだ。 だからクラスの女子が黙ってる方がカッコいい。 って評価してる。
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