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「銚…子電鉄?」
パッケージにデザインされた文字を読む。
「うん、そこの名物」
電車にも名物があるんだ。
面白い。
「鉄道事業だけじゃ赤字だから、お土産売って凌いでるの」
「…厳しいな、ソレ」
面白いと思ってごめんなさい。
俺達は坂を登りながらゴールデンウィークの思い出話に花を咲かせた。
§ § § § §
「う~~ぐいす、グッモーニン」
「おん、オハヨーしんぱち」
しんぱちと呼ばれるコイツは、八森慎也。
はちもりって言いづらいって事でもりはちが転じて『しんぱち』。
メガネかけてて銀魂の新八に似てるってのもあるらしいけど。
持ち上がり組で。
最初はチャラくて苦手なタイプだった。
でも慣れてくると、ただの気ぃ使いって分かって良く話すようになった。
こいつのお陰で外部組が浮かなくて済んだと言っても過言じゃない。
「今日のランチは、学食ぅ?」
「いやお弁当」
いちいちリアクション大きくなきゃ、本当に良いヤツなんだけどな…
「そっか、ばっしーは?」
「日直当番」
「ばっしーはお弁当かな?」
「分かんないけど、多分弁当だと思う」
旅行行って金ないって愚痴ってたし。
「庭で一緒しない?」
俺の顔を覗き込んで来た八森の目は、断るなって色をしていて…。
押し付けがましい事を言わない八森には珍しい色。
「どうしたの?」
「えっ?」
「なんか…らしくない」
一瞬だけど八森の中で何かが揺れた。
あ…しまった。
またやっちゃった。
俺ってばなんでも口にする悪癖が。
「あ、いや。なんでもねー、俺はOK一緒にお昼食べよう」
「ありがと」
八森の笑顔は人を和ませる。
綿菓子みたいな甘さがある。
「あ、ばっしー」
くるくるしながら石橋の元へ向かう。
本当に動かなきゃモテ男まっしぐらだよな。
勿体ねぇ…
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