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「新聞部かぁ~」
俺はぶらぶらと坂を下りながら、再び石橋に取り出して貰ったせんべいを口にした。
「俺には悪くない話だったな」
石橋は指についたベタベタを舌で舐めて取る。
『申請さえしてくれたら、カメラは自由に使って良いわ』
志摩先輩は優しく。
だけど挑発的な視線で石橋にそう言った。
なんでも鉄男は写真撮影も重要らしい。
そういえば。
たまに駅で見かけるような、見かけないような。
「俺は、のらないなぁ…」
ため息に乗せた言葉は坂を転がり落ちる。
八森曰わく。
俺はライター向きらしい。
生まれて初めて言われたし。
何より俺は国語に関する能力が決定的に欠如している。
漢字が兎に角苦手で、受験の時も苦労しまくった。
「俺もウグイスは言葉のセンスあると思うぞ」
「…俺の心を読むなっつーの」
上目使いで睨むと肩をすくめた。
なんだよコイツ付き合い短いのに分かったような顔すんな。
「巨乳見まくってたしな~~」
石橋はニヤニヤと気持ち悪い笑顔で俺を見た。
「あれを見ねー男なんか居ねーっつーの」
食べ終わったせんべいのを袋を投げつけると、難なくキャッチする。
「ん~~…まぁね」
茶色の瞳がスッと細くなった。
「え?お前貧乳派??」
「え?」
疑問を疑問で返された俺は言葉をなくしてしまう。
何この空気?。
「あぁ…うん、参ったな…」石橋は開けた口を押さえ、もごもごと何か言った。
「まぁ…どちらかと言うとそうかな」
「やっぱりオタクはロリコンって感じな訳?」
「って訳でもないですよ」
なんとなく変な空気だったけど。
俺は新聞部について頭がいっぱいで、それ以上話さない石橋をほったらかした。
『人を良く見てるから、新聞部に向いてると思うぞ』
そんなメールが来たのは、眠れない夜の遅い時間。
「だから、俺の心を読むなっつーの」
枕に突っ伏すと何故か石橋の笑い声が聞こえた気がした。
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