3人が本棚に入れています
本棚に追加
―――
昔、とある学校があった。
子供達は皆、親を失い引き取られた、いわゆる「孤児」であった。
しかし、ただの孤児では無く、全員が「九死に一生を得た」子供達だと言うのは、後に語られる事実である。
この学校、「流星塾」に通う一人の少年、草加雅人。
両親を水難事故で失い、不安半ばに入学した彼は、仲間に馴染めずイジメを受けていた。
「家出」も何度考えたことか。しかし、実行したところで生きていく術も見当たらない。
毎日が深い闇の中にいるような日々だった。
まだ幼い彼の心には、あまりに酷な現実だった。
一体何がいけないのか。
何故いじめられるのか。
ある日、彼はいつものようにいじめられていた。日常化したイジメに耐性が出来るほど彼も大人では無い。勿論ながら泣いていた。
バケツいっぱいの水を頭から被る。服も、ランドセルも、全て水浸しとなる。
その時だった。一人の少女が、いじめっ子達に叫び声をあげながら掴みかかった。
反抗しようが何しようが、雅人を取り巻くいじめっ子達をぶん殴ってでも、退散をさせた。
正義感の強い彼女は、泣きじゃくりながら尻餅をついている雅人に手を差し延べ、一言。
「大丈夫?草加くん。」
親を失ったのは物心のつく前だったので、それに関して悲観したりはしていなかった。
しかし、それ故に親の暖かさを知らぬ彼は、この時初めて人の暖かさを知った。
昔、聞いたことがある。
「親」と言うのは、「光」なのだと。
子供にとって、決して消えることの無い光。それが「親」というものであると。
この時、雅人の目には彼女が「光」そのものに見えた。
この日常の闇から救ってくれた光。
こうして、草加雅人は園田真理に「母」を見ることになる。
最初のコメントを投稿しよう!