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「おい!!次はこっちに運べぇ!!」
「は、はィィィイ!!」
工事現場。
一心不乱に仕事に従事し、汗を流す眼鏡をかけた細身の男。
琢磨 逸郎。彼もまた、半年前の戦いで『王』の下で戦ったオルフェノク……なのだが、今は『人間』として日雇いのバイトを転々としながら日々生活している。
「ふぅ……今日はこれだけですか。
はぁ、これじゃまた、本はお預けですね……ん?あれは…………?」
渡された給料の量を嘆きながらトボトボと歩いていた帰り道、橋の上でふと目に入ったのは一つのアタッシュケース。
泥まみれになり、いま琢磨の立つ橋の下に流れる川に落ちている。
「(も……もしかしたらお金が!?)」
期待に胸を膨らませ、人目も気にせず橋から飛び降りる琢磨。ウェヒヒ、と嫌な笑い声が口から漏れる。
「ぶへっ…………!!か…金……金ェ…………!!」
貧しい生活が続いていたのか、かなり目が眩むようになっていた琢磨は口に入る川の水やら泥やらも全く意に介さずにアタッシュケースまで一直線。
すぐさま素手で泥を払い、その姿を現した銀に輝くアタッシュケースを開ける。
「…………ッッ!?こ、これは…………!!
こんな所に、何故………!?」
「琢磨さん!!」
「…………ッ!?」
バッ、と振り返ると そこにいたのはスラッとした体型の凛々しい青年。
氷藤だ。
「お久しぶりです、琢磨さん。」
「貴方は確か……『氷藤』とかいう……。」
「あ、大丈夫ですか?」
川の縁から差し延べられた氷藤の手。
心配要らぬと言わんばかりに川からジャンプ一つで飛び上がり、氷藤の前に降り立つ。
先程までの目の色変えたような態度とは打って変わって、いつもの紳士な口調で琢磨は口を開く。
「……何の用です?」
「いやぁ、いきなりで恐縮ですが、それ、僕に譲ってくれませんか?」
「……はぁ?ふざけるのも大概になさい。大体、何故キミがこれを…………。」
「『王』の復活の為です。僕も探したんですけどねぇ……全然見つからなかったんですよ。そんな時に、琢磨さんを見つけて。
流石は琢磨さん。おかげで復活出来ますよ、『王』が。」
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