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「『王』……って、まさか……あの………!?」
自信に満ちた琢磨の表情は、次第に恐怖へと変わっていく。
以前、目の前で自身と同じラッキークローバーの一員だった北崎=ドラゴンオルフェノクが『王』に食される光景を目の当たりにした琢磨にとって、その存在は、例えオルフェノクの命を救う存在であっても恐怖でしか無かった。
「さ、渡して下さいよ。琢磨さん。」
「……い、嫌ですよ…………!!あ、あんなものに頼らずとも僕は人間として生きていく道を選んだんです……!!
大体、復活したら、またいつ仲間を襲うか……!!」
恐怖に戦く かつての先輩にやれやれと頭をおさえる氷藤。
「……仕方ないですね。恨まないで下さいよ、琢磨さん…………!」
人当たりの良さそうに話していた氷藤の口調や表情は、一気に殺気めいたものへと変貌する。
そして、一瞬にして肉体も「異形」へと変わる。
「何あれ…………!!」
「キャァァァァァアーーーッッ!!」
「ば、化け物だぁーーっ!!」
橋を通る人々はその姿を見るなりたちまちパニックに陥る。我よ我よと逃げ出す人や車で騒ぎ立てられたが、やがて一瞬で無人のバトルフィールドと化す。
「フン!!」
「がぁぁ…………っ!!」
川縁から琢磨を橋の上へ放り投げ、自身も橋へ飛び上がり 地に伏す琢磨を見下ろす。
「それでも手は離しませんか……。その執念深さも流石ですね。」
「ふ、復活なんて、させるわけには……!!」
琢磨の姿もまた、灰色に染められし「人類の進化形」へと変貌する。
「容赦はしませんよ……!!」
「嫌だ……復活は………嫌だ…………!!」
───
しばらくの間 人間として生きてきた琢磨=センチピートオルフェノクと、海外で人間を襲い続け オルフェノクとして働き続けてきた氷藤=パンサーオルフェノクとでは力の差は歴然だった。
いくら元ラッキークローバーと言えど 力の減退、さらにはアタッシュケースを握る片手が塞がっているハンデを抱えてでは勝ち目などあるはずもなく……
「はぁぁっ!!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃい!!」
パンサーの鋭い爪による攻撃を浴びるように受け続け、すっかり逃げ腰になってしまったセンチピート。情けない悲鳴が漏れる。
「たぁぁぁ!!」
「ぐぁぁぅぅ…………ッッ!!」
爪でセンチピートを突き上げ、とうとう彼の手からはアタッシュケースが離れる。
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