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「おい、待てよお前……!!」
「……あ、そうそう、忘れもん忘れもん。」
巧の声は当然ながら届かず聞こえず反応せず。
振り返り真理に近づくと、バッ!!と手からアタッシュケースを引ったくる海堂。
「……!!てンめぇ…………ッ!!」
「おっと、邪魔すんじゃねぇぞ。邪魔したら、たとえお前達でも、本気でぶっ倒すからな。
んじゃ、ア~ディオスっ。」
ピッ、と指を立てて別れの挨拶をすると、スネークに変身してそのままどこかへ飛び去ってしまう。
「待て!!……っつ…………!!」
「たっくん!!大丈夫!?」
「……一体、何が狙いなんだ、海堂は…………。
真理、乾さんも怪我してるし、一旦帰った方がいい。俺も行くから。」
「……うん、そうだね…………。」
海堂直也は走っていた。
追っているのはただ一人、氷藤=パンサーオルフェノク。彼の言った「王の復活」、それがもし本当に可能だとしたら…………
「あいつが……あの時死んだあいつが…………
照夫が生き返んなら、俺は……何だってする…………!!」
鈴木 照夫。
かつてビルの火災に巻き込まれ、海堂達に救われた少年。孤児園でも馴染めず、海堂のみに唯一心を許していたが、体内にオルフェノクの王を宿していたがために、王の消滅と共にその命を落とした。
最初は心を閉ざしていたが、次第に懐いてくるようになってから海堂にとっても大切な存在となっていた。
もし、もう一度お前に会えるなら……!!
オルフェノク態となってまで全力で追うが、その姿は見えない。
───
「はぁ……はぁ……くそっ………!!」
走って走って、疲れ果て。
人間の姿へと戻った海堂は、ぷはぁっと息を吐きながら大の字になり 固いアスファルトの上に寝転がる。
「だぁー………っ、畜生!俺様から逃げられると思うなよ!!草の根ぇ掻き分けてでも、絶対に見つけ…………!!」
力が入り、バッと起き上がった海堂は、目の前にある一つの看板に一瞬 思考を奪われる。
「…………『LUCKY CLOVER』…………って、まさか……ッ!!」
跳ね起き、立ち上がった海堂は、ドタドタと目の前の建物の階段を駆け降り そのバーへと入っていく。
「あら……意外なお客さんね……。」
「チッ……、追って来たか…………。」
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