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カウンターを挟み カクテルを飲んでいたのは氷藤・冴子の二人。
相手が海堂一人だからか、さほど慌てることもせずに 余裕の表情で「乾杯」をすると、グラスをゆっくりと口に運ぶ。冴子の顔から微笑みが消えることはない。
「……で、ベルトを奪い返しにでも来たのかしら?私たちから。たった一人で。」
「違ぇ!!俺は……あんたらに、頼みがあって来た…………!!
……頼む!!俺をあんたらの仲間に入れてくれ!!」
ハンチング帽を脱ぎ、深々と地に手を這い、土下座をする。
「……はぁ?何なんです?この男…………。」
「……理由が、あるのよね…………?」
「……『王』が前に復活した時、奴と身体を共有したガキがいた。
『王』と共に死んでったんだ、ガキも。……俺様は、『護る』って約束をした!!だから!!
……謝りてぇんだよぉ…………あいつに…………!!」
例え相手が仇なす敵であろうとも、自分の切なる想いを隠すこと無く話す。
海堂直也は、そういう男なのである。本人が気づいてない美点でもあり、啓太郎は彼のそんな所に密かに憧れを抱いていたりもする。
「……フフッ、良いじゃない……入れてあげましょう。
私達の仲間に……、ねぇ?氷藤くん…………。」
「……冴子さんがそう言うなら、まぁ……。」
冴子と二人で進める作戦。進めたかった作戦。
海堂の存在は氷藤にとって明らかに邪魔でしか無かったが、その冴子が気に入ってしまったのだから仕方が無い。
「3人……クローバーには一枚足りないわね…………
村上くん流に名付けるなら……『LOST CLOVER』って感じかしらね。
失った『王』を取り戻しましょう……必ず。」
怪しい微笑みは、より一層妖しさを増す。
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