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通り行く人々は、立ち止まる私たちなど気にもせず
騒がしい道を行き来する
「君は………」
彼の口は、それだけ言うとすぐに閉ざされた
君は…………
その続きは何?
「君は、僕と同じ音がする」
「…………え?」
音…?
「共鳴した…」
初対面なはずなのに、
彼と私の考えることが、何故か重なっていた
――――同じ"音"がする。
「…君、名前は?」
彼は私にだんだん近づいてくる
私の数寸先で止まると、
目の前を舞う蝶に彼の目はつられた
「薄羽白蝶………」
私の口からはぼそりと
その蝶の名が零れ落ちた
「君の名が?」
「え、あ、違います。
この蝶の名です」
ひらりと私の肩に止まる白い蝶を指差して、彼に言う
「君の蝶?」
「いいえ、違います。
蝶の種類、といった方が良かったですね」
「博識なんだ」
「いえ。ただ単に…」
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