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「おっ、ヴェルナ、お疲れ様っすー!」
キリのいいところまで雑用を終え、夕食の席にやってきたヴェルナをにこやかに出迎えるルームメイト。いや、お疲れも何も今日本当は君達が当番のはずなんだけど、という本音はしまっておこう。
「そういえば、情報担当を口説いてたってマジ?」
リキの突然の切り出しにヴェルナは思わず吹き出した。
「何それ俺も知らないよ!?」
実際口説いてなどいない。少し話しただけだ。それなのにどうしてこうなったのか。
「あの子って見た目は可愛いのに変なところでプライド高いから高嶺の花なんて言われてさ……」
「だから!そんなんじゃなくて――」
手遅れかも知れないが、無駄に噂が拡散するのを防ぐために必死で兄弟を説き伏せる。しかし――
「なになに、何の話?」
ここでヴェルナはまたしても吹き出した。せっかくの食事がもったいない。何て日だ。
「うわ、ちょっと何やってんのよ。あ、ここいいかしら?」
「ど、どうぞ!」
空いていた隣の席にやってきたのはよりによってセレヴィ。向かいの席で兄弟が「動かぬ証拠」だのなんだのとこそこそ話しているが、違う、そんなんじゃない。だから逃げるな。おいこら。
「な、なんで君がここに……」
隣同士二人きりにされたせいでさらに緊張が高まる。なんとかしようと話題を探す。
「ちょっと話し相手が欲しかっただけよ。あたしたちくらいの年頃ってそんなにいないし、たまに人恋しくなるのよね。」
確かにその辺りは納得できたが、ヴェルナの心臓は高鳴りっぱなしだった。同時に話し相手として認識してもらえたらしいことに少し安心した。
「あ、あの……」
「なあに?あたしが相手じゃそんなにやりづらい?」
そんなことはないけど、という反論はごにょごにょと周囲の声に埋もれていった。
「それはそうと、気になってたんだけど、あんた刺青は?」
「えっ?」
「聞いてないの?刺青がここでのマーキングなのよ。抵抗はあるかも知れないけど、後悔する前にやっておいた方がいいわよ。」
セレヴィが自身の刺青を指しながら言う。リキの言った通り可愛らしい顔立ちだというのに、強い存在感を放つ刺青がその印象を大きく変える。例外的にフェイスペイントで済ませている船員もいるそうだが、やはり抵抗がないといえば嘘になる。
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