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そんな経緯を経て今に至る。船内を案内される途中でレイヴがぼやいた。
「申請のない航海はNG、その上で犯罪やらかしたら海賊扱いだ。わかりやすいっちゃわかりやすいけど、面倒な世の中だよな。」
海に出る者が増えたことの弊害も確かにあった。海の治安の壊滅的な悪化。その結果がこの言葉通りの状況だ。
「ま、そんなわけだからそれなりの働きはしてもらうからな。」
「はっ、はい!…でも……」
「何だ?」
「船長は、どうしてそんな時に海賊に?」
純粋な興味で訊いただけだったが、あまりつついてはいけないところだったのか、レイヴは少し考える様子を見せる。
「…訊かない方がよかったです?」
「いや、気にすんな。とりあえず、これだけは言っておくけど、俺達は暴れたくて海賊やってるわけじゃねぇ。どっちかというなら宝探しが本職だ。その辺りはわかっておいてくれよな。」
その答えには気になることもあったが、深くは追及しないことにした。
そうして最後に案内されたのは小さな船室だった。
「邪魔するぞ、お前ら。今日からこいつも相部屋だ。」
どうやらここが自分の部屋になるらしい。しかし、「お前ら」ということはすでに少なくとも二人先客がいる。
目の前のレイヴこそどちらかといえば優男の部類に入るが、もしこれでルームメイトがいわゆるイメージ通りの海賊だったら――
しかしそれは杞憂だった。
そこにいたのは双子かと思う程にそっくりな少年二人。歳の頃はヴェルナより少し下くらいだろうか。
「じゃ、俺の案内はここまで。仲良くやれよ。」
「あ、ありがとうございました…?って、ちょっ……」
戸惑うヴェルナを置いてレイヴは去っていった。まさかここにきて投げ出されるとは。
「やーい、捨てられたー」
そしてまさかのこの第一声である。放ったのは長い前髪で左目を覆った方の少年。直後彼はヴェルナが言葉を発するより先にもう一人の方に殴られた。
「…リクと、このうるさいのが弟のリキ。……よろしく。」
もう一人――リクが挨拶する。どうやらこちらはまともなようで少し安心した。
「ああ、俺はヴェルナ。よろしく。」
リキはまずこの第一印象だし、リクも少々物静かが過ぎるというか――。しかし、歳が近いこともあってか、その後打ち解けるのに難はなかった。
その夜、ヴェルナは不思議な夢を見た。
誰かが名前を呼んでいる。
応えようとしても身体が動かない。
その声の主は最後まで姿を現さなかった。
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